お手軽ブルース/R&B/ファンクギター

ネタばらし満載です。


1.まえがき
ギターの演奏スタイルには様々なものがあります。人それぞれにスタイルがあって、それ自体が個性だとも言われることもありますが、そんな中で特にブルース/R&B/ファンクのスタイルはシンプルながら様々なジャンルにとけ込めるような汎用性を持っていると私は思っています。如何にシンプルに、簡単にして演奏するか、とか、どんな音楽でも共通した部分を押さえることを考えることで、音楽の垣根を超えた新しいサウンドが繰り広げられれば幸せですよね。そこで、このページでは様々なジャンルの中で使えるブルース/R&B/ファンクギターについてちょっと触れてみたいと思います。

2.先人に学ぶ
さてさて、とはいうものの、私のようなしょぼしょぼミュージシャンが考えたものを参考にする必要もなく、素晴らしいミュージシャン達がすでにいらっしゃいますので、彼らの演奏を参考にするのが最も判りやすいのですが、なかなか同じように弾けないですよね?(笑)そこで、我々のような偽者ミュージシャンの登場です。如何に簡単にして同じようなフィーリングを出せるか、「〜っぽい」という雰囲気を出せるか、ということに注目してご紹介したいと思います。

1)アルバート・キング
まずはブルースギターのこの方が弾きそうなプレイを参照して、ブルースギターの基本を感じてみましょう。
サンプル(blues01.mp3)
ブルースギターは、速弾きも必要無く(もちろん、やりたければやってもいいし)、基本的に3つから4つのフレーズを繰り返していれば問題ありませんが、忘れてはいけないのはそのフレーズに思いきり感情を入れることが最も重要だということです。いろいろな唄い方が少しずつ身に着いてくるまでは、ゆっくり自分の唄えるフレーズを、しっかりと唄うことが大事です。手が動くからといって、いたずらにフレットを押さえるだけではブルースにはならない、とアルバート・キング本人もインタビューで語っています。さらに彼のフィーリングをソロに入れたい場合は、最初のフレーズを弾いた後にすかさず「アォ!」とか「イェーイ!」とかの叫び声を入れるようにするといいでしょう。

2)コーネル・デュプリー
さて、この方から学べることはとてもたくさんあります。バッキングとソロ、どちらにも使えるネタが満載です。特に、彼自身も多くのポップスや歌もののレコードに参加しているということもあり、即使えるネタも多く、困ったときは「コーネルならどう弾く?」と考えると大概がうまくいくと思っています(笑)。本家の教則ビデオや教則本などでもいろいろと語られているのですが、そのままやるのは急には難しいですので、ここでは簡単めなアレンジを加えて彼らしい雰囲気の出るネタをご紹介しましょう。

サンプル(cd01.mp3)
まずは3コードのバッキングから。単にコードをカッティングすることに飽きてきたら、このやり方で合わせてみてください。このフレーズのキモは、ウラの音をブラッシングしてグルーブをあわせることなんですが、右手はどちらかというと振りっぱなしで、左手でミュートをするのがコツです。右手ミュートで慣れている方はいろいろと試してみてください。ちなみにコーネル本人の演奏には、これに5弦あたりの経過音が入って、それがさらにグルービーに聴こえるアクセントになっています。

サンプル(cd02.mp3)
次は1コードでダブルストップを混ぜたバッキングフレーズを。基本的に5弦にルートがある7thコードの時にちょっとしたアクセントで使えます。

サンプル(cd03.mp3)
これもバッキングの例です。リズムに対してアクセントをつけるように、小節の先頭から8分のタイミングでスライドで入るのですが、これが結構いいアクセントになります。特に、がーっと盛り上がった後にドンと落とす時の入りに使うと美味しいでしょう。

サンプル(cd04.mp3)
次はソロのネタです。空間になった場所には必ずバッキングのようなフレーズを混ぜると彼らしい感じになります。そのバッキングのようなフレーズには、先に紹介したダブルストップと8分スライドが応用できるので試してみてください。

サンプル(cd05.mp3)
ソロの中で、特に彼らしい雰囲気を持つフレーズです。例えば3コードのときには、基本的に4度7thのコードに入るときに使うとびしっとハマるでしょう。考え方としては、4度のコードのメジャーペンタトニックに9thの音が混じってるような感じです。って、そのままですが(笑)。メジャーなのでちょっととぼけた雰囲気があるフレーズで、雰囲気を変えたいときにガツンとやるといいと思います。

3)エディ・ヘイゼル
FUNKADELICのギタリストで、ジミヘンフリークでもあるこの方は、何気にかっこいいバッキングをいろいろとやっていまして、その中で特に気にいっているネタをご紹介します。

サンプル(eh01.mp3)
まずはEのファンクで使えるフレーズです。最初のダブルストップと、最後のキメフレーズがキモです。これを9thカッティングの中にアクセントとして応用したものが次のカッティングです。

サンプル(eh02.mp3)
次はその応用です。ベース音で6弦を定期的に頭に鳴らすと、音が厚くなってファンキーな雰囲気になります。

4)デビット・T・ウォーカー
最近のR&B系のポップスには、このスタイルがあれば基本的に全部いけるんではないか、と思う程スタンダードになってますが、独特のスタイルなのでなかなか同じ雰囲気にならないんですよね。そこで、ちょっとだけアレンジを加えて簡単に出来そうなものをいくつかご紹介してみます。

サンプル(dt01.mp3)
僕はこの人はメジャー7thの帝王だと思っていまして、バッキング中に様々な小技を繰り広げています。特にこの小指でハマリングを細かくする技とスライドは、バッキングにちょっとHな雰囲気を演出してくれます。

サンプル(dt02.mp3)
これもバッキングのアクセントに使える技。メジャー7th(9)を分解しているだけなんですが、キーボードがいたり、ギター2本のバンドでどちらもコード弾きすると重くなるときにオブリガードで使うと効果的です。タイム感と音の長さがすごくキモなので、楽曲に応じて使い分けていただくとよいでしょう。

3.万能なペンタトニックスケール
さて、先人のエキスを注入した後は、ペンタトニックスケールを使ったソロで個性を引き立たせてみましょう。ギターソロを弾こうとする時にまず最初に覚えるのがこのペンタなんですが、音が少ないのでいろんなスケールをカバーすることができるようになっています。その基本を少しばかり応用することで、個性的な唄い方もできるようになります。ジャズとかをやるにはさすがにペンタ以外の唄い方が必要な部分も出て来るのですが、ここではファンクやR&Bに限定した形でいくつかのコツをご紹介したいと思います。(ペンタトニックスケールそのものについては、いろいろな参考書をご参照ください。)

1)メジャーとマイナーを行ったり来たり
サンプル(pen01.mp3)
ペンタの応用はほとんどこれだけでもオーケーです。例えばA7がルートのコードだったとすると、AペンタとAメジャーのペンタとなるF#ペンタを合体させた唄い方をすると幅を出すことができます。また、メジャーペンタで攻めて、後半をマイナーペンタで泣かす、という流れも常套手段のひとつです。それから、コードチェンジのタイミングでこのスケールの移動を行うと、コードチェンジを際立たせることができます。ただし、綺麗なコードの曲の場合は、マイナーペンタを乱用することで楽曲をぶち壊すこともできる、ということを忘れないでください(笑)。

2)終わりよければすべてよし
サンプル(pen02.mp3)
ソロのフレーズをアドリブで組み立てていくときに、変な音を弾いてしまったりとか、途中で変なスケールを間違えて弾いたりしたときに、何処かへ行ってしまったような雰囲気になることがあります。(もちろん、そのフレーズが十分唄っていればそれで問題ないし、むしろ「アウトしてるじゃーん」とカッコよかったりするときもあるんですが(笑)。)また、キーと同じペンタを弾いていても、適当に音を並べているだけだとちょっとダサダサなフレーズが生まれてしまうことがあります。これを防ぐためには、フレーズの終わりの音に気をつけるとググッとアドリブが唄ってきます。最も簡単なのは、「ルートの音で終わるフレーズ」です。16小節あるアドリブが与えられた時に、16小節をいくつかの枠に区切って枠の終わりにルートの音を持って来るだけで、ソロがすっきりとします。

サンプル(pen03.mp3)
これに慣れてきたら今度は「フレーズの終わりがくる所の後ろでなっているコードトーンのどれか」でフレーズが終わるように組み立ててみましょう。さらに、「コードトーンのテンションノート」で終わるフレーズを唄えるようになればペンタだけでポップスのオシャレなサウンドの中で違和感のない、だけどブルージーなソロを弾くことが出来るでしょう。ちなみに私はあまり得意ではないので、このあたり意識しすぎないようにしています。これを意識しすぎたがために流れが悪くなると逆効果なので、確実に自分のフレーズとして唄えるところだけに絞っています。無理をしないように少しずつ試してみてください。

3)アウトに挑戦
サンプル(pen04.mp3)
しっかりと馴染むフレーズが出て来るようになると、やはり人間は他のこともしたくなるものです。ジョン・スコフィールドなどがよくやっている「アウト」がソロの世界では面白い部分の1つです。これもペンタで解決しようということなのですが、基本的に半音上のペンタと半音下のペンタを組み合わせてアウトするという方法をラリー・カールトンが紹介していたので、参考にしていただくとよいでしょう。私がよく使うのは(って、やったことあるか?って言われそうですが。。。)半音上のペンタを混ぜるというやつですが、一応オルタード(ホントに知ってるのか?とつっこまれそうですが。。。)に乗るように聴こえるので、ドミナントモーションの部分で使うことが多いです。これはまだ私も研究中なので、ご紹介まで。それから、例えばA7のオルタードはC7のペンタの中で唄えるのでそれを応用してかなり奇抜な唄い方ができる、とジョンスコがビデオで語っていましたので、これも試してみると面白いでしょう。

4.単音バッキング
ギターのスタイルの中で、最も地味と言っても過言ではないスタイルがこの単音バッキングなんですが、私はこのバッキングスタイルが大好きです。たった1つの音で、リズムとコード感とに彩を加える醍醐味がありますが、ここでは簡単にペンタで組み立てる単音バッキングをご紹介します。

1)単音コケコケバッキング
サンプル(pen05.mp3)
ペンタを使ったバッキングとして、ポップスのなかでよく使われるのがこのスタイルです。これも3-2)で紹介した方法論を応用して、「終わりよければすべてよし」なフレーズを組み立てていくとハズレがなくてよいと思います。これもキーボードが居たり、もう一人ギターが居る時に便利なスタイルです。また、コード進行が難しいけど、メロディがひとつのキーで完結している場合は、無理矢理ルートのメジャーペンタで押し通すという力技もありますので、いろんなキーで試しておくと咄嗟の場合に応用できます。ギターならではの技ですね。音色のコツは、右手でハーフミュートよりもちょっとだけ強くミュート(この塩梅がちょっと難しいのですが、、、)した状態で強めにピッキングすることです。さらにミュートの強さを強くすると丸い音、軽くすると硬い音が出るので、そのニュアンスをフレーズに組み合わせるとさらに幅が広がります。ミュートする場所はブリッジに近い方がコントロールしやすいと思います。

2)単音アタックカッティング
サンプル(pen06.mp3)
同じ単音バッキングでも、こちらはアタックの強いニュアンスを出すことができますので、ファンクのバッキングやアップテンポなポップスにかなり使えます。これも3-2)の終わりよければすべてよしの法則を利用してペンタトニックのフレーズを作ってみてください。途中にコードトーンでアクセントを作ればさらにバリエーションが広がります。また、ワウペダルと組み合わせてファンキーなニュアンスを出すのもアリですね。

3.あとがき
というわけで、駆け足で簡単にブルース/R&B/ファンクギターをさらりとなめてみましたが、いかがでしたでしょうか?これでもう私のギターのすべてが赤裸々にされたと言っても過言ではありません(笑)。少なー。とはいえ、やはりたくさんいい音楽を聴き、いい音楽をやることでさらに自分の味が加わってひとつのギタースタイルが確立されていきますので、最も自分が楽な方法を是非探してみてください。


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