FM Haro! at up-on studio


この日は朝からいしかわがバタバタしていた。何を隠そう、遅れに遅れている4thアルバム「Drive Drive Drive」の最終マスタリングを行っていたのだ。「いやー、さくっと終わるつもりがさ、通して聴くといろいろ出てくるのよね」CDに焼いてサンプルを作っては聴く、作っては聴くを繰り返し、ようやく出来上がったのがこの日。「なんとか9月のライブに間に合わせたいよね」(編註:このときこれからどんなことが起きるか、彼らは知る由もない)。

午後からのんべんだらりと集まったメンバーたち。公共の電波に自らの演奏を流してしまうことに、緊張の面持ち・・・と思いきや、すぐに生中を飲み始める始末。会場となるup-on studioは、新浜松駅の高架下にあるprontoの中にあるのも災いし、すぐにご機嫌なメンバーたち。もう、ホントにどうなることやら。

だらだらしているうちに、スタッフの面々と打ち合わせ。まるで自らの番組のように流れを決めていく。「どーも、皆さん、こんにちは。ブラックバスのここぞとばかりに、の時間です。司会は私、リーダーのいしかわがお送りいたします。ちぇけらー、なーんてのは要らないですよね?(笑)」(いしかわ)。当初3曲くらいの予定が、全部で5曲のサイズになり、俄然やる気まんまん。しかも、今回は全編アコースティックでのアレンジを施し、いつもとは違う大人の雰囲気を醸し出す。「なんて言うんだろう、ある意味原点に帰ろうとしてるのかもしれないね。もともと、僕といしかわで、アコギで始めたのがスタートなわけだし、当時はライブもアコースティックだったしね」(ガル師匠)。「このバンドを始めてから、なんだかんだでもう5年目だし、僕らも少しずつ成長してて、そして何より、もう30歳だからねえ(笑)。少しは落ち着いたところもあるわけだし」(Dr.ASH)。そんな言葉の裏には、百戦錬磨の自信と経験によるサクセスストーリーが彼らの頭の中に鮮明に描かれていることが見え隠れしている。

さて、簡単なサウンドチェックを済ませて、いざ本番へ。まるで金魚鉢に入れられたようなスタジオで、外に向かってスタンバイ。道行く女子高生に満面の笑みで手を振るいしかわ。「いやさ、すごいよね。なんて言ったって、手を振ったら振り返してくれるんだよ!そんなのさ、このガラスの外でやったらただのストーカーだよ」(いしかわ)(編註:発想が貧困すぎる。。。)。そんなおちゃらけた一面を見せつつ、スタートしたのは「Too late, Tonight」。何とも大人なサウンド!ガル師匠のガッドギターのオブリが冴え渡る。「音が出た瞬間、あ、これはひとつ上に行ったな、って気持ちだったよ。まさかこんなにハマるとは思わなかった」(ガル師匠)。「なんて言うか、これぞブラバの音、っていうか、絶妙なバランス感なんだよね。フォークでもないし、ロックでもない。ポップスなんだけど、なんかブラックというか。要はブラバなんだよね」(Dr.ASH)。「この曲、急に決めたんだけど、大正解だったね。ちょうど、お店の雰囲気にも合ってたし」(てっちゃん)。

曲が終わった後、いしかわが簡単な挨拶。続けて今回のアルバムからのシングルカット候補曲である「ふたり」へ。「この曲も、アコースティックだと映えるね。ある意味原点回帰な曲だから、当然サウンドもちょうどよかったんだろうね。それに思い入れも深いし」(いしかわ)との言葉にもあるように、メンバー全員の思いがひしひしと伝わってくる。次々に立ち止まる歩行者たち。「しっかり伝わるのかな、って思ってたけど、そんな心配は無用だったね。道行く人々が、それぞれの思いを胸に、それぞれの温度で聴いてくれてて、ホントにうれしかったよ」(Dr.ASH)。この後パーソナリティとの簡単なインタビュー。ブラバの近況報告、バンドの簡単な紹介などを経て、今回のCD発売を宣伝。そしてそこからタイトルチューンと言っても過言ではない「ドライブ」をCDでお届け。この後次のライブを紹介して、いよいよ後半戦に突入。まずは「心の声」。これもやはり日頃と違ったニュアンスで、いつにも増してダイナミクスあふれる演奏。いしかわのボーカルにも熱が入る。いつもはエレキギターでアツい泣きのソロとなるこの曲も、クールに響く。この曲が終わった瞬間、pronto内のお客さんから割れんばかりの拍手が。「いやー、びっくりしたねえ。うれしかったよ。僕らを見に来たわけではなく来て、ただそこで食べてるだけなのに、ちゃんと聴いてくれてさ。じーん、ときちゃったね」(ガル師匠)。

そうこうしているうちに、そろそろお別れの時間が近づいてくる。楽しい時間は永遠には続くものではない。最後は「Good Night」だ。「ここのところ、この曲が最後の定番になりつつあってさ。ギンギンに盛り上げて終わるのもいいんだけど、しっとりゆっくり終わるのもなんかいいんだよね」(いしかわ)。いつしかガラスの向こうには多くのギャラリーが集まってそれぞれにブラバサウンドを満喫していた。「僕らにとっても、なんだろう、一つの節目みたいな雰囲気のライブだったよ。いろいろ気がつくこともあったし、僕ら自身のことを見つめ直すことができたんじゃないかな」(Dr.ASH)。またひとつ、ブラバの歴史に新たなページが刻まれた。


セットリスト
too late, tonight
ふたり
ドライブ(CD)
心の声
Good Night


戻る