1999年12月、そのとき歴史は動いた。リーダーいしかわが当時やっていたCrossover Factoryが、もし1999年12/23にライブが出来ていたら、今日の日は別の形になっていたかもしれない。いや、おそらく存在していなかっただろう。COFがライブできなかったがために、このいい加減なユニット「ザ・ブラックバス」が誕生したことを知っている人はもはや少数派かもしれない。そう、ブラバは誕生から丸5年を迎えようとしている。「早いねえ、ほんとに。いろいろとやってきたけど、まさかこんなに続くとは思ってなかったよ」(いしかわ)と笑顔で言った言葉の裏には、5年の積み重ねを経た喜びがひしひしと伝わってくる。「今回は、しっかりと準備をしてきたからね。丁寧に演奏したいね」(Dr.ASH)「いろいろアクシデントもあったけど、まあ、順調じゃないかな」(ガル師匠)「気持ちいい時間が作れるといいよね」(てっちゃん)とメンバーそれぞれの思いも募る。
今回は今までの2年間おんぶにだっこしてもらっていたStory冬至ライブを離れ、単独開催されることになった。「去年も一昨年も、正直乗っかっていただけだからね。今年はしっかり自分たちでやってみないか、って話になったんだ」(Dr.ASH)「いつまでも甘えてばかりはいられないしね」(ガル師匠)。対バンには、このライブでデビューを飾るうってぃオールスターズ、いしかわの先輩で構成されているリズマニング(東京)、そして、最早兄弟バンドと言っても過言ではないtheつじどー(湘南)という、ブラバと気心しれたメンバーが集まり、ライブ華やかに彩る。「いやー、いいバンドを呼ぶことができて幸せだよ。どちらも、僕がすごく大切にしている人たちだしね。言ってみれば僕の音楽人生の昔と今が、ここでつながる感じなんだ。それだけでホントに十分だ」(いしかわ)。強者ぞろいの対バンを迎え、ブラバはどういうステージをみせてくれるのか!?
うってぃオールスターズがほんのりと客席を温かくし、リズマニングのタイトなサウンドがキレを与え、theつじどーがユーモアとハイクオリティなサウンドでしっかりと持ち上げた状態で、満を持してブラバ登場。「普段は前座が多いから、なんか不思議な感じだよね」(Dr.ASH)。客席の明かりが落ち、いしかわのカッティングがスタート。「ドライブ」だ。「CDは1曲めだから、合わせてみたんだよ。レコ発ライブでもあるしね。アルバムの流れと同じような雰囲気で始めたかったんだよね」(ガル師匠)。今回はてっちゃんがジャンベとコンガのパーカススタイル。「原点回帰だね。もう一度足下から見つめていくんだよ」(てっちゃん)。アレンジも少しずつ変わり、日々楽曲が成長している。続いて「ふたり」へ。シンプルなサウンドで、メロディが映える。「この曲は、CDもそうだけど、ライブでもすごく重要な位置を占めるようになってきたよね。前にもあったけど、2曲めって大事なんだよね。だから、今回はこの曲を選んだ。間違いなかったんじゃなかな」(いしかわ)。会場は一気に涙モードへ。さらにたたみかけるように「夕暮れ」が続く。切ない、しかしどこかで温かい気持ちが会場全体を包み込んでいる。ここでMC。5年間の感謝を伝えるいしかわ。その後は人気曲「気まぐれ」。レゲエにアレンジされたサウンドにオーディエンスが揺れる。「こんなにしっくりくるとは思わなかったね。まるで、最初からレゲエだったみたいだ」(てっちゃん)。ひとつひとつの音を噛み締めるように演奏するDr.ASH、ワウでむせび泣くようにソロを奏でるガル師匠。渋みを増したブラバサウンドがオーディエンスの心をつかんで離さない。続いてニューオーリンズなベースラインが会場を一気に軽快に走らせる「太陽と悪魔の日焼け跡」。簡単なメンバー紹介から曲へ駆け抜けていく。「日焼け跡は毎回アレンジをちょこっとずつ変えてるんだ。今回も少しだけね」(ガル師匠)と言うように、なんといしかわがソロを弾く。「何となくね。たまにはいいもんだよね。僕がギタリストだってことを知らない人も多いしね(笑)。それも、5年続けたことの結果かもしれないね」(いしかわ)と、坦々とソロを奏でる。ここでMC。CDの宣伝や、怪我の功名で得たスローライフの話を挟んで後半戦へ突入。まずはしっとりと「冬のぼくたちは」。涙が止まらない浜ちゃん(編註:ピンポイントやん!しかもメンバーでないし)。さらに業界人ファンの多い「ぐうたら」へ。「つじどーの人たちも大好きなんだよ、この曲」(Dr.ASH)。さらに「Too late, tonight」へと続く。「初期ブラバの代表曲なんだよね、このあたり。これからも大切にしていきたい曲ばかりなんだよ」(ガル師匠)。アツいギターソロを叩き込むガル師匠と、その後ろでアイコンタクトでグルーブを確かめ合う3人。ブラバサウンドの神髄がここに。ホットなエンディングを迎え、興奮醒める間もなく「情熱」のベースラインがうなりをあげる。メンバー紹介の後、キレのあるサウンドでオーディエンスを煽る。さらに続けて「季節がわり」がスタート。Dr.ASHの丁寧なベースソロが美しい。そして最後はしっとりと「Good Night」でクールダウン。「起承転結とはこのことだ。これもアルバムの流れを意識してるんだよね」(いしかわ)。鳴り止まない拍手が会場をひとつにする。アンコールは「台風」。「今年は天災が多かったから、この曲をやることはすごいいろいろ悩んだよ。でもね、この曲を聴いて少しでもみんなが元気になれたらな、とも思うんだよ。だから、より深くなったね」(Dr.ASH)。そんな思いを乗せたサウンドは、遠く天まで昇っていく。メンバーのひとつひとつの気持ちが大きな塊となって人々の心に届いて行く。会場の拍手はいつまでもなり続けてやまなかった。
今回、またひとつ節目を迎えたブラバ。「今回は本当に丁寧にやりたいね、って話をして、実際すごく丁寧にやれたんだよ。でも、まだまだやりたいことがいっぱいあるんだ。これからどういう状況になるかは誰にも判らないけど、少なくとも今回のライブが、これからの僕らの指針であることは間違いないかもしれない」(いしかわ)。彼らに見えてるものが何なのか、それはこれからのライブが教えてくれるのかもしれないし、もしかすると、神のみぞ知る、かもしれない。
--セットリスト-- ドライブ ふたり 夕暮れ 気まぐれ 太陽と悪魔の日焼け跡 冬のぼくたちは ぐうたら Too Late, tonight 情熱 季節がわり Good Night --アンコール-- 台風