ザ・ブラックバス 6周年記念ライブ
2005年12月24日(土) 浜松 sincopation


急激に寒くなってきた12月。師走とはよく言ったもので、メンバーは大忙し。特にDr.ASHは直前に本場中国から緊急来日(編註:何の本場?)。「師正も走るのが12月」(Dr.ASH)との名言も残しつつこの日を迎えることとなった。

この日、そう、ブラバ6周年は奇しくもクリスマスイブ。しかも3連休の中日という信じられない日程である。しかも、突き抜けるような晴天。「これは一波乱あるよね」(いしかわ)(編註:謎)「すっかり汚名返上。もう雨男なんていうのは存在しないよ」(Dr.ASH)。メンバーそれぞれにのんびりとイブの昼間を過ごし、夕方ゆったりと会場入り。今回は音響機材も自前で用意。「STAGEPAS 300っていうポータブルPAなんだけどさ、これ、秘密兵器なの。僕らみたいな小編成のバンドにはぴったりだよ。それに、今回の会場のサイズもさ、ちょうどいいんだよね。セッティングもあっという間にできちゃうよ」(いしかわ)。さっそくセッティングをしてリハーサルを開始。「音がよくて気持ちよかったから、リハの時点でもう大満足だったよ」(Dr.ASH)「すごく馴染んでたよね」(ガル師匠)。早くも自画自賛モード全開。リハ120%本番30%の法則か?

きよしこの夜が粛々と訪れ、恋人たちが寒さに身体を寄せ合う頃、まったりとステージに現れたメンバー。会場は何となくであるがほっこりとした温かい雰囲気で包まれている。おもむろにいしかわが弾き始めたのは「Too late, tonight」。「まずはこれで僕らの気持ちをほぐすんだよね。大事なライブだからこそ、リラックスしてやりたいからね」(ガル師匠)。のっけから飛ばしていくメンバー。一気に会場がアツくなる。MCでご挨拶。今日はゆっくり楽しんでほしい、というメンバーの気持ちを伝えた後に、いしかわが発した曲名は「夕暮れ」。Dr.ASHとガル師匠が一瞬凍りつく。「だってさあ、予定にないんだもん」(ガル師匠)「そんなさあ、メンバーに対してサプライズしてどうするのよ(笑)」(Dr.ASH)「いやー、リハでやったときあまりによかったから、ついついやりたくなっちゃって」(いしかわ)。そんな驚きの(編註:お客さんには関係ない)曲だったとは思えない、いつもよりもアツい演奏を繰り広げるブラバ。アンサンブルも阿吽の呼吸で他にはないグルーブを生み出している。続いて「冬のぼくたちは」。「この時期限定だからね」(いしかわ)。しっとりと酔いしれるオーディエンス。3連の心地よい揺れが、冬の乾いた空気感を演出している。そしてここからはいよいよ本日のメインイベント。4thアルバム「Drive Drive Drive」を1曲めから曲順通りに演奏。「実験だよね」(ガル師匠)「どう聴こえるんだろうね、やっぱりさ、CDを普段聴いてくれている人には面白いんじゃないかな」(Dr.ASH)「僕らどうしてもカセットとかLPで育ってきたもんだから、A面B面で考えちゃうよね(笑)」(いしかわ)。というわけで、1stステージでは、前半5曲を演奏することに。「では、5曲続けて」というMCに大ウケのオーディエンス。疾走感溢れる「ドライブ」、温かい歌詞がこの季節にぴったりの「彩」が続く。「彩」はブラバのライブでは初めて演奏された曲。「前はキーも違ってたんだけど、思い切り声を張り上げて歌う曲でもないから、キーを下げてゆっくり歌えるようにしたの。この方が聴いてる方も疲れないと思うしね」(いしかわ)。ここで何故かMC。「すいません、やっぱり続けるのはしんどいです」(いしかわ)。やはり大ウケのオーディエンス。「ここのところMCでウケることなかったから新鮮だったね(笑)」(Dr.ASH)「第一演奏中心でセット組むから、あんまり喋らないもんね」(ガル師匠)。そういった意味でも、6周年をゆっくりくつろいでいるメンバーの雰囲気がオーディエンスと一体となっている。次の曲は「ふたり」。ひとつひとつの音を丁寧に紡いでいくブラバ。続いて「Yes I Do」ではメンバー紹介を軽く挟み、一気に畳み掛けていく。「そもそも、こういうR&Bな曲はさ、ドラムなしでやるのって結構辛いんだけど、それが今日は全然気にならないくらいに馴染んでたんだよね」(Dr.ASH)「僕らの心の中で同じドラムが聴こえてたんだよ」(ガル師匠)。そして1stステージの最後は「少しだけ」。この曲はライブでは初めて演奏された曲。CDでは完全なR&Bサウンドだが、ライブではボサノバっぽいアレンジに。「この違いも楽しんでもらえるといいよね。それもライブの醍醐味だ」(いしかわ)。

1stステージと2ndステージの合間に、ブラバからオーディエンスへシャンパンのプレゼント。「みんなでメリークリスマスをしたくてね」(ガル師匠)「みんなびっくりして、でも喜んでくれてたのが印象的だったね」(Dr.ASH)「何だかライブに来てくれたみんなが家族になった気分だったよ」(いしかわ)。粋な計らいに、オーディエンスの気持ちもさらに温かくなる。

満を持して2ndステージに突入。まずは「There is nothing, but here is something」。この曲もCDとはまったく異なるアレンジが施され、また違った雰囲気に仕上がっている。「この曲はね、もともとドラムありきで曲とかアレンジができてるんだよね。だから、そのままやったらちょっと違和感があるの。だから、ドラムレスで再構築した、っていう方が正しいよ」(いしかわ)。しっとりと歌い上げるAメロと、一気に畳み掛けるサビのメリハリがオーディエンスの心を力強く打つ。続いて「至上の愛」。この曲もライブでは初お目見え。「隠れた名曲だと思うよ。結構この曲を好きな曲に挙げる人も多いしね」(Dr.ASH)「むしろ、なんで今までやってなかったかが疑問だよね」(いしかわ)。ガル師匠のブルージーなギターソロが縦横無尽に繰り広げられる。そして、切れ味するどいカッティングで煽るいしかわ。グルービーなベースラインで全体を包み込むDr.ASH。3人のサウンドがひとつの歌を奏でる瞬間。これぞグルーブ。これぞ愛(編註:謎)。ここで手を休めないブラバ。「心の声」のイントロが始まる。ライブではおなじみとなったこの曲では、一緒に口ずさむオーディエンス。続いて「どうよ?」へ。このつながりも王道中の王道。「様式美だよね。いわばHR/HMの世界だ」(Dr.ASH)。一気に盛り上がって行くオーディエンス。そしてCDの最後の曲「Good Night」でクールダウン。青野りえの歌詞が、オーディエンスの心をいつの間にか包み込んでいる。ここからはもうブラバの独壇場(編註:ワンマンライブなので当然)。まずはブラバのテーマソングと言っても過言ではない「ぐうたら」。続いていしかわのブルージーなイントロで始まったのは「日焼け跡」。サビは「一体白い雪 今日はクリスマスイブ」と歌詞を変えてお届け。「全然関係ないんだけどね。第一夏の曲だし(笑)」(いしかわ)。恒例のメンバー紹介ソロ合戦では、ガル師匠、いしかわの後、Dr.ASHが一気に会場に火をつける。Donny Hathawayの名曲「GHETTO」のフレーズを弾き始めたのに合わせ、オーディエンスと大合唱。女性8割の会場では、男性陣の声が少なかったものの、会場中が2つに別れてひとつの音楽を作り上げた。まさにコール&レスポンス。まさに一枚岩。「いやー、これは気持ちよかったね。みんなしっかり歌ってくれたし。嬉しかったなあ」(いしかわ)。会場がクライマックスを迎えたところで畳み掛けるように「情熱」。ガル師匠のジャジーなギターソロが炸裂。ブラバのグルーブもオーディエンスとともに転がり続けて感動のエンディングを迎えた。しかし、只は返さないオーディエンス。アンコールが鳴り止まない。嬉しさのあまり喋り倒すいしかわ。アンコールに選んだ曲はハナレグミの名曲「家族の風景」。この曲をブラバの曲だと勘違いしているオーディエンスも居るくらいに定番となっているが、これもバンドでは初めての演奏。しっとりと歌い上げるブラバ。そして、お別れの曲はシングル発売も近い「あじさい」。最後はしっとりと、そして温かい気持ちになって6周年記念ライブの幕を閉じた。

それにしても、今年はブラバにとっても激動の1年だった。てっちゃんの脱退で途方に暮れ、そして新たなドラマーゆきちゃんとの出会い。そのすべてが血となり肉となってブラバのサウンドに反映されているのは間違いない。また、昨年の5周年があまりに大々的な開催だったこともあり、今年は身の丈にあった、いわば家族の集まり的な方向性へと転換したことも大きな動きであった。しかしながら、一歩一歩階段を昇るようにブラバが成長していく姿を、オーディエンスたちは目の当たりにした。そして、「いいライブはいいお客さんが創る」という言葉の意味を、メンバーが再認識したライブであった。来年のライブがますます期待される、そんな6周年であった。


---セットリスト---
-1st Stage-
Too Late, Tonight
夕暮れ
冬のぼくたちは
ドライブ

ふたり
Yes, I Do
少しだけ

(シャンパンで乾杯)

-2nd stage-
There is nothing, but here is something
至上の愛
心の声
どうよ?
Good Night
ぐうたら
日焼け跡(クリスマスVer.)
情熱

-アンコール-
家族の風景
あじさい


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