「ザ・ブラックバス9周年&加藤姉妹5周年記念ライブ」
2008年12月6日(土) 浜松 Jazz in B♭


ブラバも早いもので、結成してから今年で丸9年。今では各メンバーはそれぞれ自分の活動をしているし、最早バンドではない状態で2年ほど活動してきたのだけど、さすがにそろそろ次のステップに進む時期なのだろう、と思っているところでこの節目を迎えることになった。なので、ちょうどよい。ここで一区切りさせてもらおう、ということで、5周年を迎えてこれからますます活動していきたい加藤姉妹には申し訳ないけど、勝手に区切りライブにさせてもらった。

この9年の間に、みんな生活も変わって、結婚してたり、子供が産まれたりしているので、今日のライブは半分が託児所と化していた。開演時間もいつもより1時間前倒しして、あまり遅い時間にならないようにしたり、会場をすべて禁煙にしたり、と、人間ってここまで変われるのか、というくらいのクリーン度。(編註: 同じブラバとは思えない。) これもすべて、親になったことが影響しているんだなあ、と思うと感慨深い。

リハのときに、原因不明のノイズに悩まされていたものの、本番前には無事解消して、まずは加藤姉妹が演奏する。新曲、初期の曲をバランスよくちりばめて、いつものように気持ちのよいハーモニーを聴かせてくれた。初期の曲は、アレンジとかを一緒にやったりしてたので、何となく当時のことが思い出されて、ちょっとだけ昔の気分になってみたりして。そういう曲が、自分たちの手で作られて、今ここにあることが嬉しかったりね。そこに、最近感じてたこととか、ここのところのライブで学んだこととかが、ぐわーっと混じってきて、なんだか不思議な気持ちだった。

途中から僕も参加して一緒にやる曲を5曲ほど。この中ではやっぱりポニョが大変だった。コードの動きが激しいのだよね。でも、子供の曲は短いのでさくさく進むね。2分くらいだもんね。子供たちを観てると、その理由はよく判る。3分超えるともう聴いてないもんね(笑)。どんどん変わっていくステージ構成が要求される。「おかあさんといっしょ」の曲である「きみのこえ」は僕のリクエスト。いい曲なんだよね。今年多分最もたくさん聴いた曲だし。歌詞もばっちり記憶してる感じ。(編註: ブラバの曲でもそうあってほしい。)

さて、ブラバの番。お客さんもほぼ家族(笑)ということで、最初に決めたセットリストを、その場で大幅に変更した。ちょうど前の日に読んだ本が「喜ばれる」という小林正観さんの本で、その冒頭にとあるジャズ歌手の話があった。
とあるパーティーの会場で、すごい歌唱力で、自身が得意のジャズをバシバシ歌ったけど、淡々とした拍手で終わった。次の日、たまたま朝食で居合わせたので、話をしたところ、ステージの回数も少なくて、バイトしながらやってる。ステージはどんどん減ってる。とその歌手は話したらしい。そのパーティーのお客さんは40から50歳くらいの人が中心だったから、歌謡曲とか演歌とかやったらもっと喜んでもらえただろう、せっかく歌唱力があるのだから、もっとその場のお客さんが喜んでくれそうなことをやったらどう?とアドバイスをした、
という話が載ってた。

これを読んだときに思い出したのは、前にポンタさんとやったときのライブで、なんとかライブをまとめようと勝手に進めた僕にポンタさんが怒鳴りつけたことが「何で勝手にどんどん行くんだ、お客さんが聴きたいのをやらなきゃダメだろ!」っていう言葉だった。まったくその通りだな、と思った。今まで僕はひとりで自己満足だけで音楽をやったり、歌を歌っていたのかもしれない。もっと周りの人たちを喜ばせてあげることができたかもしれない。そう思ってやまなかった。自分を磨く必要もなく、素晴らしい人になる必要もなく、周りに喜んでもらうことができる、頼まれたら気持ち良くやる、それでいいじゃないか、っていうのが、その「喜ばれる」という本のテーマなのだけど、これにはガツンとやられたと同時に、なんか自分の中で力がまた抜けた部分があった。僕自身空っぽになって、何も考えずに演奏するのもいいのではないかな。

そこで、この日のメインターゲットである子供たちに向かって、子供たちが楽しんでもらえるような曲と、来てくれた家族のような方たちが、ポルカで楽しんでくれていた懐かしい曲、お客さんで来てくれた人が結婚したお祝いに作った曲というかんじで、そこに居る人たちのみんなが喜んでくれるような選曲にしてみた。僕の意思とか、こう魅せたいとか、そういうのは一切なし。今までステージでも何でも、結構意図的に作っていくことが多かったので、本当に新鮮な気持ちだった。でも、終わった時の気持ちいい感じは、今までとは全然違う、数段いいものだった。これがもしかしたら、ステージの本質、エンターテイメントの本質なのかもしれないな。

ここでまたひとつ思い出される話が、先日一緒にやったドラマー、チッコさんが言った言葉。
「一番感動する演奏は、何にも考えないで、楽勝で演奏してるやつだ。思い入れとか、気持ち入れるとかやったらたどたどしくなっちゃう。不自然だよ。自分がしゃべるときにいちいち思いを入れようとか考えるか?考えてないだろ?それと同じだよ。入れると重すぎるんだ。トッププロとか、全然力は入らずにやってるじゃん?で、すげー感動するじゃん?そういうもんだよ」
この話がここで繋がった。そうか、自分を空っぽにして、リラックスして、お客さんが喜んでくれることをやればいいんだよな。この9年の集大成がここで見事に繋がって、大きな収穫を得ることができたように思った。本当に充実した活動だった。それと同時に、来年からは石川秀明個人の活動として、弾き語りをやったり、バンドをやったりしていきたいと思っています。

皆さま、長い間本当にありがとうございました。そして、今後ともよろしくお願いします。

---セットリスト---
冬のぼくたちは (with 加藤姉妹)
赤いスイートピー (with 加藤姉妹)
ふたりで歩む道 (with 加藤姉妹)
崖の上のポニョ(with 加藤姉妹)
きみのこえ (with 加藤姉妹)

Too late, tonight
ぐうたら
ぼよよん行進曲

あじさい
ずんずんあるいて
ドライブ
台風

風船(with 加藤姉妹)
Good Night (with 加藤姉妹)



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