Story 冬至ライブ Vol.11


ザ・ブラックバス4周年記念2Daysの最終日。Story"冬至ライブVol.11"への参加はこれで2回め。奇しくもStoryとブラバは、どちらも初めてのライブが同じ冬至の日(編注:正確には1日違いで、ブラバは1999/12/23、Storyは1993/12/22)なのである。「2001年のときかな?別々にやったんだけど、2日続けて観に来てくれる方に申し訳なくて、どうせなら一緒にやろうかっていうのがそもそもの始まりなんだよね。それに、同じオリジナルで、数少ないポップス系の男性ボーカルだし、一緒にやっちゃった方が効率いいかな、って思ったんだ」(いしかわ)。今年は2年目ということで、ブラバメンバーも冬至ライブのシステムに慣れた様子。でも、朝9時の集合には間に合わず。相変わらずの面々である。

Storyはこのライブでちょうど10年を迎え、ひとつの節目ということで多くのメンバーが出演。総勢18名がステージ上に居る姿は壮絶である。オリジナルメンバーのギタリスト高田氏は7年ぶりの復帰、木許氏の新プロジェクト「K-Pro」もCDシングルを発売し、ますます波に乗っている気配。そんなパワフルなStoryに対して、ブラバはどのように挑むのか。

今回のブラバの目玉は、アンケートでセットリストを決定することである。「僕らもようやく曲が増えてきたし、本当にお客さんが聴きたい曲は何だろう、って思ってこの企画をやろうと思ったんだよね」(Dr.ASH)。「僕ら自身でセット組むときっていうのは、ライブの流れとか、盛り上がり方とか、そういう方向が主になるんだけどさ、そうすると、どうしても同じような曲に固まっちゃうんだよね。でも、今回は4周年っていう記念だから、そういうのは抜きで、純粋に楽曲勝負、みたいな雰囲気でやってみたらどうだろう、って思ったんだ。自分で言うのもなんだけど、いい曲増えてきたしね(笑)」(ガル師匠)。このようなメンバーのコメントからも、かなりの余裕が感じられる(編注:単純に自分らでセットリストを考えるのが面倒だったっていう噂もある)。

さて、まずはリハーサルでいしかわのギターがトラブルに見舞われる。ラインで出力した音が安定せず、大きくなったり小さくなったりする。「あれには正直焦ったね。すごく信頼しているPAさんたちだったから、絶対ギターか僕のシールドだと思ったよ。前にも本番でピックアップの電池がなくなったことがあって、事前に交換してたんだ。まあ、結果はDIから卓に行く間のシールドだったみたいだけど、でも、このおかげでアンプに替えたら、これがまたいい音でさ。音を出す装置に関しては、こだわりないから何でもいいんだけど、出音がいいに越したことはないからね。トラブル万歳だ」(いしかわ)。トラブルを克服して、より結束が固くなったブラバは、リハを終了してはなまるうどんへ。コシのあるうどんを堪能しつつ、来年の予定についてミーティング。全員の考え方も大枠で一致しており、今後の方向性もはっきりと見えた様子であった。「なんとなくさ、みんな同じこと考えてるんだなあ、って思ったよ」(ガル師匠)。

いよいよ本番。司会者を兼ねていたいしかわは、早速セッティングを終え喋り倒しモードへ。セッティングが終わってからも喋り続けている。おいおい。ふと我に返りスタートした曲は「too late, tonight」。相変わらずのアツい演奏だ。「1曲めにバラードっぽい曲をやるのって、結構萌えるんだ。内面から盛り上がってくる感じってのが、後まで続いてくんだよね」(てっちゃん)のコメントのように、てっちゃんの気持ちのこもったビートが煽る。岡本ガル師匠のギターソロがそれに応える。1曲めからこのテンションの高さは何だ!ブラバの気合が前面へあふれ出し、100名を超えるオーディエンスがそれをがっぷり四つで受け止める。まさに、気分は両国国技館だ(編注:謎)。続けて流れるように「サブリナ」へ。今回のアンケートで、得票率ナンバー1は、なんとこの曲なのである。「いつも言ってるんだけど、2曲めっていい曲が多いんだよね。僕の好きな曲って、ほとんどそうなの。だから、Steely Danなんかさ、2曲めだけ入れたオリジナルCDを作って聴いてるもんね(笑)。"ソウデスカ"を作ったときに、2曲めをどれにするかすごい迷ったんだけど、やっぱりこの曲にしたのは間違ってなかったのかな」(いしかわ)。そんな思いを胸に、しっとりと歌い上げるいしかわ。歌うように支えるDr.ASHのベースも気持ちよい。さらに、「木許さんの大好きな曲です」と言ってから始まったのが「とぼけた顔」。弾き語りで切々と歌い上げるいしかわ。会場は水を打ったように静まり、耳を傾け、眼を閉じて、それぞれの想いを馳せる。「実はバンド形式で演奏しようとしたんだけど、リハで1回やってすぐに止めにしたんだ。なにしろ僕が聴きたかったからね(笑)」(Dr.ASH)。さらに続けて「季節がわり」へ。イントロではDr.ASHの新兵器'74年製のジャズベースが歌う。"Bメロ大魔王"いしかわの楽曲と青野りえの歌詞が絶妙なバランスのこの曲も、多くのファンに支持されてエントリー。「この曲出来て、もう8年くらいになるんだよなあ。最初はインストでね。"通り雨"ってタイトルでさ。当時も結構気に入ってたけど、今やっても全然古くないし、逆に何かやっとこの曲のいいとこが実感できる歳になったような気がするんだよね」(いしかわ)。さらに、この季節には間違いない、いしかわ&青野コンビの傑作「冬のぼくたちは」へ続く。この流れに、会場の至るところですすり泣く音やハンカチを目頭へ当てる姿が。恐るべしアンケート選曲。「この曲聴くとさ、後で演奏できないくらい取り乱しちゃうんだよ」(はまざき)(編注:っていうかメンバーのコメントじゃないじゃん!)。ここでやっとMCが入る。「今回のセットリストはアンケートで決めさせていただいたんですが、皆さん暗い曲が好きなんですねえ」とのコメントに会場は大笑いの渦へ。「これからもブラバの暗い曲を宜しくお願いします」と言って始めた曲は「台風」である。「日本全国季節のうた100選」に選ばれた(編注:大嘘。毎回毎回よく思いつくものだ。)この曲も堂々のアンケート2位でエントリー。「映像がさ、しっかり見えてくるんだよね。逆に、そういう曲でないとやっぱりノレないよね」(てっちゃん)。続いて唯一アンケートでない選曲だったのは、前回発表したばかりの新曲「Good Night」。優しい雰囲気が会場を包み込む。「"2人になって 夢が変わって だけど それもいいよ それでいいよ"ってサビなんだけど、本当にカンタンな言葉で、すごい広い世界を想像させるじゃない?なかなかこうはいかないんだよなあ。ついつい説明したくなるんだよね。一度青野の頭をパカって開いて覗いてみたいよ」(いしかわ)。そんな想いを胸に必死で伝えようとするブラバ。そして、最後の曲「ドライブ」へ突入。今回唯一のアップテンポな曲では、Dr.ASHのベースが唸る。Jazzフィーリング溢れるガル師匠のソロ。疾走感溢れるてっちゃんのグルーブ。どれひとつを取ってもこのサウンドは成り立たない。実は風邪をひいて本調子でないいしかわも最後の力を振り絞って歌う。終了の瞬間、割れんばかりの拍手が会場を包む。「痛みをこらえてよく頑張った!感動した!ありがとう!」(小泉首相)(編注:国技館じゃないってば)。

終了後のブラバは抜け殻のようだった。しかし、今回のセットは終わったあとに、不思議なじんわりとした感動が残っていた。いつもの盛り上がりとは違う、なんだか心の奥底がじわっと暖かくなったような気分であった。「やっぱり、アンケートで決めるってのは本当に聴きたい曲が集まるんだな、って思ったね。毎回それでやるのは芸がないけど、こうやって節目にはまたやってみたいな」(Dr.ASH)。「僕らのやってきたことは、多分間違ってなかったんだね。それに、今後どうしていくか、ってことも見えてきた。僕らにとってもいいライブだったと思うよ」(ガル師匠)。「もっといろいろ仕掛けしていきたいところあるんだよね。Dr.ASHとのコンビネーションも、ここに来てしっかりしてきたしね」(てっちゃん)。「そろそろアルバム作らないとねえ。結構楽しみにしてくれてる人も多いんだよね。相変わらず業界人ばっかりだけど(笑)」(いしかわ)。来年の方向性もしっかりと確かめ、一歩一歩オトナの階段を上っていくブラバであった。来年はどうなることやら。


セットリスト
too late, tonight
サブリナ
とぼけた顔
季節がわり
冬のぼくたちは
台風
Good Night
ドライブ


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