朝から何気に落ち着かない。いまだかつて、ライブだからといってそわそわした素振りを見せたことのないブラバだが、この日は違っていた。「いやー、ワクワクしてたまらなかったんだよ」(いしかわ)「今か今かと、待ち望んでいたね」(Dr.ASH)「カレンダーにバツを付けてたよ」(ガル師匠)「あたしも行くー」(女将)。何がそんなにブラバの面々を盛り上げているのか。そこに1本の電話が。「肉は買っておいたでねー。自分で飲むものは買ってきて」(てっちゃん)。そう、浜名湖畔でバーベキューだったのである。(編註:おい、ライブは?)
11時30分頃、てっちゃん家に集合し、一同は目的地の三ヶ日パラディソへ。浜名湖畔に位置するこのお店は、数々のミュージシャンたちがその佇まい、ロケーションに感激した、まさにリゾート。メンバー一同、到着と同時にセッティング。炭を起こすてっちゃんの手さばきは、まさに職人。肉をほおばり、お腹いっぱいのメンバーたち。浜名湖上では、水上スキーを楽しんでいる人たちがいて、颯爽と駆け抜けて行くを眺めながらのんびりとした時間を過ごしている。(編註:だから、ライブは?)
お腹いっぱいでいい気分になってきたころ、ライブハウスのママさんから、「そろそろリハでもどう?」との声。おお、そうだった、今日はライブだった。(編註:今頃気がついたのか。)いそいそと片付けをしてセッティング。サクっと音を出して終了。「いやー、すっかりいい気分だったから、よくわかんないね(笑)」(いしかわ)「牛タン、美味かった」(Dr.ASH)。今日の出演は全部で5組。リハーサルでは、高校生バンドのフレッシュなサウンドが元気に踊っていた。「いやー、最近の高校生は上手だよねえ」(ガル師匠)。本番まではかなりの時間があるので、控え室となっている2DKの「ミュージシャンお泊まり部屋」でのんびり。この空間がまた快適。「夏にはゆっくり泊まり掛けでのライブやりたいねえ」(てっちゃん)「引越したいくらいだ」(いしかわ)と、皆でご満悦。そんな調子で過ごしているうちに当たりが少しずつ夜モード。春先の風はまだ少し肌寒く、遠くに見える館山寺界隈のほのかな灯が、少しばかり哀愁を誘う。
いよいよライブスタート。司会はなんといしかわだ(笑)。「いきなりだったからねえ、何かここがポルカやメリーユーでないのがちょっと不思議な感じだった。第一、どんなバンドが出るのかさえ知らないんだ。バンド名から膨らませて喋るのは正直キツかったけど、まあ、何とかなるもんだね」(いしかわ)。先程の高校生バンドが、メッセージたっぷりのストレートなロックを演奏していっきにヒートアップ、その後2人組のユニットがしっとりとスタンダードを聴かせ、アングラなサウンドの年齢不祥バンドを経て、いよいよブラバ登場!まずはしっとりと「心の声」で幕をあける。ざわざわしていた客席が、いつのまにかブラバサウンドに包まれて静かに、そしてどこか温かい雰囲気に変わっていく。続けて「ぐうたら」へ。「判りやすい、ってことだったら、この曲が一番ブラバとは、っていうものを判りやすく伝えてると思うんだよね。しかも、幅広い年齢層にね」(いしかわ)「今日なんかはさ、高校生から、おばちゃんたちまで居る感じだからちょうどいい選曲だよね」(Dr.ASH)。ここで少しMCが入り、すぐに「there is nothing,but here is something」へ。アツく盛り上がって行くのと同時に、オーディエンスがどんどんと集中していく。ガル師匠の奏でるブルージーなサウンドを聴いて、ロックキッズたちもじっと見つめている。「季節はもう過ぎていますが、、、」と言いつつ始めたのは「冬のぼくたちは」。もはや言うことない。しっとりと酔いしれるオーディエンス。続けて「気象協会が選ぶ季節の歌50」にもエントリーされた(編註:やっぱり嘘)「台風」が続く。目頭を押さえるオーディエンス。きっと遠くへ出稼ぎに出ている息子を思っているのだろう(編註:イメージ映像)。さらに畳み掛けたのは「too klate,tonight」。「この曲は、このお店にぴったりだと思ったんだ」(ガル師匠)。いつもよりも長いソロで盛り上げて行く。「ちょうど湖上に見える灯がよくてね。現実を忘れちゃいそうだったよ」(いしかわ)。ここでMC。いよいよ最後の2曲を演奏する前に、ここにまた戻ってくることをオーディエンスに約束(編註:またバーベキューをしたいだけという噂も)。おもむろにスタートしたのは「ドライブ」。駆け抜けるような疾走感で一気に会場がクライマックスへ向かっていく。ステージと共に一丸となってヒートアップ。続けて「情熱」だ。王道の流れできていたそのとき、姉さん、事件です!なんと、Dr.ASHのベースの3弦が切れてしまった!!「3弦って切れるんやー!」(Dr.ASH)。「いやー、びっくりしたね。突然音が無くなるんだもんね」(いしかわ)強力な武器を失い、裸一貫で望むブラバ。しかし、残されたメンバーは諦めていなかった。いつにも増してしっかりと伝えようとするいしかわ、まるでメロディを奏でるかのようにリズムを支えるてっちゃん、踊るように空間を埋めていくガル師匠、三位一体の改革が進む日本政府のように(編註:謎)推し進めていく姿は、むしろ爽やかな風が吹いているかのような気分にさせる。これぞブラバマジック。「何が起きてもさ、普通だよ。だってそれがライブなんだからさ。むしろそれを楽しんでいるくらいだ。今日は何が起きるんだろうってね」(ガル師匠)。またひとつ大人の階段を昇ったブラバであった。終了後、会場からは割れんばかりの拍手が包み込む。もっと聴きたい、そんな気持ちをぐっと堪えて次のバンドを迎えたオーディエンスであった。
ここでひとつ番外編。パラディソがオークションで落札したお店のドラムのシンバルは、なんと、いしかわの親戚からゲットしたものだった。「びっくりしたね、ホントに。世の中せまいけど、こんなにとは思わなかった」(いしかわ)。音楽が結びつけていく人と人との繋がり、そして巡り巡って帰っていく輪廻を改めて実感した1日であった。
セットリスト 心の声 ぐうたら there is nothing, but here is something 冬のぼくたちは 台風 too late,tonight ドライブ 情熱