B♭初登場


 ここのところ、はっきり言って活動していないのではないか、という疑惑をもたれつつも、定期的にライブを行っているブラバだが、そんなことはないぞ、という元気な答えがこのB♭初登場ワンマンであった。

 事の始まりは今から約半年ほど前に遡る。B♭のオーナーであるベーシストの田村さんが、どこからともなく聴いたブラバサウンドを大層気に入り、Dr.ASHに出演を打診したのを皮切りに強力なラブコールをいただくことに。「当初はさ、ジャズのハコだって聞いてたから、そんなとこでうちらみたいなチャラチャラしたのが演ってもいいのかなって遠慮してたんだ」(いしかわ)。そうこうしているうちに諸事情により日程は後へ後へ、と延びていくが、エイヤで決定したのがこのワンマンライブであった。「幸い磐田で(ワンマンを)やってたしね。ある程度見えていたから」(ガル師匠)「久しぶりだよね、ちゃんとワンマンやるの。あのしょぼしょぼな2周年以来じゃないの?(笑)」(てっちゃん)。

 さて当日。裏切ることなく昼間から雨が降っている。「もうさ、間違いないよね」(いしかわ)「降らないと逆に不安になるよ」(Dr.ASH)。早々と会場入りし、午後開催の女性ボーカルによるオムニバスライブをゆっくり鑑賞しながら入念にサウンドをチェックしている、、、と思いきや早々にビールを飲むいしかわ。「いやー、気持ちいいねえ。晴れてたらもっとよかったのにねえ。」とご満悦。相変わらずのダラダラぶりを遺憾なく発揮している。

 16時頃からメンバーがぼちぼちと集まってくる。それぞれにそれぞれのペースでセッティングを始めるメンバーたち。ここでいしかわのギターにトラブル発生。「今日換えたばかりの弦がもう死んでる!!やっぱり3セット900円の弦じゃだめだねー。あはは」(いしかわ)。おもむろに新たな弦を張ろうとしたらさらに加えて事件発生!「普通の弦だと思ったら、コンパウンド弦だった。やいやい、やられちゃったやー」(いしかわ)と6弦だけまったく色や響きの違う弦をつま弾きながら大笑いをしている。加えてDr.ASHの持ち込んだベースアンプが、お店に備え付けてあるキャビネットスピーカーに接続できるケーブルがない!しかし、メンバーはそんなことも関係なくだらだらとセッティングを進めている(編註:先が思いやられる瞬間。とほほ。)本番どうなることやら。。。

 開演までの間、お茶とおかしが用意された控え室に通されたメンバー。「こんな経験ないねえ。まるでVIP待遇じゃん!」(いしかわ)「大事にされないもんねえ」(Dr.ASH)「ちゃんとしてるなあ」(ガル師匠)と大喜びである。(編註:単純な連中だ。)それぞれにごろごろだらだらと本番に備える。

 いよいよ開宴時間がやってくる。足下の悪い中、多くのオーディエンスが集結し、今か今かと待っている。颯爽とメンバーが登場し、始まったのはなんと「冬のぼくたちは」だった。「季節は違うんだけど、リクエストをいただいたんでね。半袖のアロハシャツで、っていうのはさておき(笑)」(いしかわ)「突然決まったんだ。全然やる予定なかったんだけどね。でも、喜んでもらえるなら何だってやるよ」(Dr.ASH)。てっちゃんのマジカルミステリーグルーヴ、しっとりとした3拍子のグルーヴに包まれる会場は、最早メリーゴーランド状態と化す。続いてDr.ASHのどっしりとしたベースからスタートする「情熱」。イントロ中のご挨拶から一気にハイテンションである。"あの日の想いはこの胸に熱く燃えて"いるオーディエンスを煽るように、キレのよいカッティングをお見舞いしているガル師匠。そしてまた一転してCoolなイントロでスタートしたのは「サブリナ」。人気ナンバー1の名曲たちが畳み掛けるオープニングにオーディエンスは失神寸前。簡単なMCの後、おもむろにスタートしたのは「とぼけた顔」。弾き語り+ギターのシンプルなセットでむせび泣くようなメッセージを伝えるいしかわ。「色褪せないよね、この曲は。いつも何か新鮮な気持ちになるんだよ」(Dr.ASH)。ロック魂溢れんばかりの「there is nothing, but here is something」ではガル師匠の、70年代のヘヴィロックを昇華した熱いギターソロが今日も炸裂。まるで今日が人生最後の日かのように力を振り絞って歌ういしかわ。つづけてミュージシャンたちに人気の高い「ぐうたら」が続く。「これぞブラバだなあ、って思える曲だよね」(ガル師匠)「生き方そのものだよ」(Dr.ASH)。ここでMC。最近いしかわが凝ってるのはバレーボールだという、何の脈略もない支離滅裂しかもオチもない語りに、会場がぼやぼやした雰囲気に包まれる中、おもむろにスタートしたのは「夕暮れ」。切ないメロディと歌詞が、さっきまでの支離滅裂な雰囲気を一気に振り払う。そして、1部最後の曲は「ドライブ」で一気に駆け抜けていく。

 さて、第2部のスタート。第1部の余韻醒めやらぬうちにおもむろにメンバーが現れ、「心の声」が始まる。弾き語りからバンドサウンドへ繋がる瞬間から、鳥肌溢れんばかりの世界へ突入(編註:意味不明!)。ロックバラードへと昇華された感もあり、ますます温度も上がっている。続けて「どうよ?」へ。「この繋がりって王道なんだよね。もちろん僕らの中だけなんだけど、ついつい心の声が終わったらどうよ?のイントロへ行っちゃうんだよ」(てっちゃん)「何だろうね、繋がってるのが自然なんだよね」(Dr.ASH)。メンバーも語るとおり、スムーズな気持ちの流れがオーディエンスの心の隙間に、気持ちよい風を送り込んでいる。ここでMC。雨風についてはうるさい(編註:(謎))いしかわの投げっぱなしな話に、オーディエンスも不思議ちゃん状態である。そんな中スタートしたのは、全国瓦業者協議会に「瓦屋根を推奨する曲100選」としてピックアップされた(編註:毎度ながらおお嘘)名曲「台風」。外の雨が楽曲の持つ雰囲気をさらにリアルなものに彩っている。続いて「季節がわり」。"平成の雷神"と称される(編註:雨男とも読む)Dr.ASHのイントロのシンプルなベースソロで、せき止めたダムを一気に放流したかのような感動の涙を流す天気(編註:単に雨が強くなっただけ)。会場は一気にお湿りタイムだ。ここでMC。久しぶりの新曲について語るいしかわ。そう、次の曲は新曲「ふたり」だ。「ここのところ、コードとか、メロディとかにすごくいろいろ凝ってたから、ここらへんで少しシンプルなものに還ってみようかなっていうとこから始まったんだ」(いしかわ)。空間を意識したシンプルなサウンドは、まさに演奏者を丸裸にしてしまう。「苦労するよ、これ。ほんとに音が少ないからね。でも、だからこそ想いが入る余地が多いってことでもあるから、そうだね、行間を読んでほしい小節みたいな感じかな」(ガル師匠)。「Donny Hathawayに見えてたものが、少しばかりだけど僕にも見えたんじゃないかなあって。でも、それは本当にほんの少しの光ではあるんだけどね」(Dr.ASH)。歌詞では、訳ありな2人の微妙な関係と愛情溢れる気持ちを表現した世界に、今までになかった何かを感じるオーディエンス。また新たな一面を見せるブラバ。ここでMC。相変わらずの宇宙感で喋るいしかわ。今日はどこへ行くつもりなのか。そんな中、ジョンスコばりのアウトしたMCで大笑いしながら紹介した曲は、正反対の雰囲気を持つ「too late,Tonight」。一気に会場がCoolな都会にTrip。これでもかというくらいの想いで弾き倒すガル師匠。涙を堪えているかのような思いつめた気持ちで必死に追い抜きをかけるDr.ASH。重厚なサウンドで押し上げていくてっちゃん。一丸となって進んで行く重戦車かのようなパワーに圧倒されるオーディエンス。キター!そして畳み掛けるようにエンディング「太陽と悪魔の日焼け跡」へ突入。途中ベースソロから「ギャルとおれら」のコール&レスポンス大合唱を経て一気にエンディング!怒濤の2時間が一気に過ぎていった。醒めやらぬオーディエンス。アンコールの拍手がいつまでも鳴り響く。ここで、ブラバがチョイスしたのは、「Good Night」。「しっとりと始まって、しっとりと終わりたかったんだよね」(いしかわ)。言葉どおり、ゆっくりとクールダウンしていきながら、やがて眠りへのカウントダウンを始めるかのごとく、青野りえによるやさしい歌詞がオーディエンスをひとりひとり抱きしめていく。最後は「おやすみなさい」といういしかわの言葉で、ゆっくりと幕を閉じた。


セットリスト
冬のぼくたちは
情熱
サブリナ
とぼけた顔
there is nothing, but here is something
ぐうたら
夕暮れ
ドライブ
心の声
どうよ?
台風
季節がわり
ふたり
too late,tonight
太陽と悪魔の日焼け跡
Good Night


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