さよならポルカドットスリム


こんな日が訪れるなんて、一体誰が想像しただろうか。ブラバが生まれ育った聖地「ポルカドットスリム」が、ビルの取り壊しのために閉店してしまうなんて。あり得ない、あり得ないよー、と途方に暮れているブラバメンバーたち。しかし、そんな思いを胸にこの日はさぞかし気合いの入ったステージを見せてくれることだろう。

リーダーいしかわは、朝から迷っていた。「エレキでやるか、アコギでやるか、ドットコムのときは本当に悩むよ。バッキングはアコギの方がしっくりくるんだけど、ソロはガツンとロックな音でやりたいしね。まあ、それで今回は苦肉の策で」と、彼が選択した答えは、「普段のアコギをギターアンプで鳴らして、エフェクトとか、歪ませたりすればいいかもね、って閃いたんだ。我ながら名案だったね。」(編註:どっちも持って行くのをめんどくさがっただけ。)早速リハーサルで入念にサウンドチェックを行い、思いのほかまともなサウンドに満足するいしかわ。「何とかなるもんだよね。ギターはどれも一緒だね」と大味なコメント。やいやい。

一方Dr.ASHは朝から緊張に包まれていた。「朝練もやって、昼練もやったよ。それでも落ち着かないくらいだった。そう、まるで初めて付き合った女と、初めてのデートに行くような気分だったよ。」それほどまでに彼を盛り上げるもの、そう、今日はスペシャルゲストを迎えてのステージである。そのスペシャルゲストとは、浜松を代表するファンクバンド「かえる」で疾走感溢れるグルーブをたたき出している本田進である。ここでは仮にMr.Hondaと呼ぶことにする。Mr.HondaとDr.ASHのコンビネーションが吉と出るか、凶と出るか、本番を待つことにしよう。

さて、本番(編註:早!)。タイバンの万歳テポドンズが、その名の通り爆発的なパワーで圧倒し、温まりまくった雰囲気の中、おもむろにスタートしたのは「心の声」。Dr.ASHの涙のベースソロが心にしみる。ギターソロはもちろん、アコギを歪ませたロックサウンドだ。「ガル師匠の分まで演奏するつもりだったよ。コピーしたし(笑)」(いしかわ)。続いてDr.ASHがベースラインからスタートしたのは「ぐうたら」。「この曲こそ、ブラバサウンドだよね。ポルカがあったからこそ、僕らが居て、この曲があるんだと思うと、感慨深くてね。」(Dr.ASH)との言葉どおり、気持ちいっぱいの演奏を繰り広げるブラバ。Mr.Hondaも楽しそうに絡む。ここでMC。4枚めのアルバム「Drive Drive Drive」の進捗を報告。「本当に楽しみにしてくれてる人が多くてね。だから、頑張って早くお届けしたいんだよね。ちょっと遅れ気味で申し訳ないんだけど、でも、いいものになりそうだよ」(いしかわ)。ここからはスペシャルゲストMr.Hondaの持ち味を活かすべくブラック系の楽曲を続けていく。まずは「ふたり」。「ダニー・ハサウェイになりたかったんだよ。程遠いけど(笑)」(いしかわ)という気持ちから生まれたこの曲に、メンバーそれぞれが思いを乗せて歌う。続いて「Yes,I Do」。「だいたい、Yes, I Doなんて言う?絶対言わないよね(笑)。I have a penと同じくらい言わない(笑)。でも何か語感がいいんだよね。サウンド重視だから」(Dr.ASH)。さらに「Too late, tonight」と続く。空気感あふれるMr.Hondaのドラムが粋だ。それに触発されたかのようにDr.ASHのベースがうねる。いしかわもいつもよりも熱の入った歌とギターを繰り広げる。ここでMC。「最後2曲になりましたが、ここでスペシャルゲスト登場です!」なんだなんだ、Mr.Honda以外にもゲストがあるのか??と会場がはてなに包まれた瞬間、「Onギター、岡本和樹!」とおたけびがあがる。そう、我らがガル師匠が登場だ。なんという演出。黄色い声援が飛び交う。「これぞエンターテイメントだよね」(ガル師匠)。ガル師匠を迎えてまずは「Drive」。さらに活き活きとするブラバ。「いやー、やっぱり必要なんだよね」(Dr.ASH)「オリジナルメンバーだからね。いないとブラバじゃないってことだ」(いしかわ)の言葉がその存在の重さを物語る。いつもよりもアツいソロで応酬するガル師匠。バッキングであおるいしかわ。一体感のある疾走を見せるDr.ASH&Mr.Honda。すべてがひとつになった瞬間だ。最後にMr.Hondaのリクエストで選曲された「情熱」。「ポルカでの演奏はこれが最後かと思うと、やっぱり大事にしちゃうよね。でも、いつもどおりであることも大事なんだよね」(いしかわ)。力出し切った、そんな満足感あふれる表情がメンバーを包む。ありがとう、ポルカドットスリム。僕らのポルカは、僕らの心の中に永遠に存在しつづけることだろう。
セットリスト
心の声
ぐうたら
ふたり
Yes, I Do
Too late, tonight
Drive
情熱


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